お伊勢さんのお膝元で、私どもは赤福餅一筋に、お伊勢参りの皆さまをお迎えして参りました。昔も今も、そして、これからも。

赤福本店の建物は明治以来130年余り、大切にして参りました。

伊勢らしい切妻屋根は間口を広げるために高くし、正面に掲げた横書きの大きな看板には金色で赤福の二文字。妻入りの軒先にかかる海老茶色ののれんをくぐると、朱塗りのかまどから湯気が立ち昇っています。地元度会産の番茶を焙じる香ばしい薫りが広がる店内では、餅入れさんと呼ぶ女性職人が繊細な指先で、赤福餅の三筋の清流を一つ一つ真心こめて形づくります。

店内は畳敷きの座敷と、清流で知られる五十鈴川に面した縁側。そして、川向うには伊勢で一番高い朝熊山を始め、神さまのご用材を養う神路山の緑の山並をご覧いただけます。

一年を通じて朝5時にはお参りができますので、私どもは毎朝5時に店を開けます。お伊勢参りの皆さまのお越しを、今日もお待ち申し上げております。

かまど

 赤福本店の店頭に、朱塗りの竈(かまど)を据えております。この独特な形の竈・三宝荒神(さんぽうこうじん)は、むかし伊勢参宮の折、お足の弱いご婦人らに愛用された三人乗りの馬の鞍「三宝荒神」を造形化したものです。三宝荒神には別の意味があり、三宝を守る火の神を「三宝荒神」と申します。これを竈の神さまとして祀っております。赤福本店でお出しする番茶は、この竈で沸かした湯を使います。おもてなしの象徴でもある竈とともに、今日も皆さまをお迎えいたします。

句碑

 「巣燕も覚めゐて四時に竈焚く(すつばめもさめいてよじにかまどたく)」
本店庭先の句碑は、俳人山口誓子先生が詠まれたものです。
毎朝5時の開店に備え、4時頃に竈の火を焚きます。 まだ薄暗い店内で女将が竈に薪をくべる様子を 巣から顔をのぞかせた燕が見守っているという内容ですが、 ただの一日も欠かすことなく続けることの強い忍耐力を詠んで下さいました。

つばめ

 つばめの到来は、春が来たしるし。 つばめは人けの多い賑やかなところに巣をつくる習性があり、 昔からつばめが巣をつくる家は商いが繁盛して縁起がよいと いわれてきました。 赤福本店の軒先にも、毎春つばめが巣作りをします。 子つばめも生まれ、南へ巣立つその日まで 子育てを見守っております。

施行

*イメージは当時のおかげ参りの人々と施行のイメージ
 江戸時代に盛んになったお伊勢参り。無事にお伊勢参りができるのは、目には見えない神様のおかげ。そして道中の人々の「施行(せぎょう)」と呼ぶ様々なお世話のおかげ。お伊勢参りは、「おかげ参り」と呼ばれるようになりました。

施行とは、お伊勢参りの旅人が無事に念願を果たせるよう、道中の人々が宿や食事、風呂、路銀などを施すことを申します。

施行をすれば徳を積めるという考えから、参宮道中の誰もがすすんで行なったと伝えられております。